地大豆研究としての宇宙大豆プロジェクト
私たち人類は、火星で暮らすことができるのか。壮大なテーマを掲げ2009年からスタートした宇宙教育プロジェクト。宇宙に打ち上げた16種類の種子の1つに、食品としてなじみの深い大豆があります。打ち上げたのは、日本で古くから地域に根付いて育てられてきた20種類の大豆。宇宙大豆プロジェクトでは宇宙から戻ってきた20種類の大豆と地球で保管した大豆の比較研究を行います。このプロジェクトで宇宙大豆管理委員会のアドバイザーを務める三重大学の梅崎輝尚さんに地大豆研究について伺いました。
所変われば、大豆もかわる
色も形も様々な地大豆は、名前の付き方にも特徴があります。例えば、鶏頭大豆は、茎の先端に密集してできる花が鶏の頭のように見えることが名前の由来。品種登録されていないものも多く、正式な名称がわからないものもあるのです。地大豆がこれほど多様な理由は、大豆の植物としての特徴にあります。大豆は栽培する場所や土壌条件などによって収量や成熟期が変わります。さらに、開花の際には日長や温度に強く影響を受けるのです。地域によって生育条件が最適な大豆が異なるために、2000年という大豆栽培の歴史の中で選別され、地大豆として地域に根付いてきたのです。
急速に広がった育成品種
しかし、地大豆は年々姿を消しつつあります。現在日本に出回っている国産大豆のほとんどは、育成品種と呼ばれる、人工的な交配により生み出された大豆です。大量生産・大量流通という目的から、地大豆よりも広い範囲で育てやすい、品質も地域で差が出にくい品種が作られました。その結果、安定生産ができる育成品種が普及するようになりました。育成品種が広がる一方で、地大豆はその存在を忘れられてしまったのです。
地大豆栽培で地域連携教育を
大量生産・大量消費の時代が終わり、その地域で最適な大豆として地大豆が再び注目を集めるだろうと梅崎先生は考えています。海外から安い大豆が輸入される中で、国産のものには品質のよいものが求められます。地域で長年受け継がれてきた地大豆は、地産地消の代名詞になる可能性があるのです。宇宙から大豆へと、子どもたちの興味が広がることもまた、宇宙教育プロジェクトの魅力の1つです。
宇宙大豆プロジェクトに参加をお考えの方はこちらをご覧ください。