宇宙航空研究開発機構は9日、5月に打ち上げた宇宙ヨット実証機「イカロス」が太陽の光によるわずかな圧力(太陽光圧)を受けて機体が速度変化するのを確認、14メートル四方の膜が帆として機能するのに成功したと発表した。
太陽に近づく方向で飛行するイカロスにとって、太陽光圧は機体の速度を落とすいわば“向かい風”。だが将来、木星探査機など太陽から遠ざかる方向で飛行する機体に応用すれば、太陽光圧は機体を加速させる動力として利用できるという。
宇宙機構によると、太陽光の微小な圧力でも、空気抵抗のない宇宙で加わり続ければ大きな動力となる。イカロス全体で受ける太陽光圧の力は地球上で感じられる一円玉の重さの9分の1程度だが、効果が積み重なり、膜の展開から約1カ月で時速約36キロ分の減速を達成した。
イカロスは今後、太陽光の反射を調整して方向転換する実験などを繰り返す。宇宙ヨットの発想は100年ほど前からあり小説などにも登場するが実現した例はなく、イカロスが方向転換に成功すれば世界初となる。
(共同通信社)