宇宙ステーションの中の「カビ」を持って帰ってくるという
面白いプロジェクトがあるので紹介します。
このプロジェクトを担当するのは帝京大学・医真菌研究センターの
槇村浩一准教授です。今回積み込んでいる帝京大学のトマト種子の出発式でも
講演いただいた先生で、いつもトレードマークのハットを被っている、
英国紳士のようなすてきな先生です。
なぜ、「カビ」を持って帰るのか?
宇宙ステーションの中は人が快適に暮らせる環境なので、
人だけでなくカビにとっても心地よい場所なのです。
例えば、水虫の原因である白癬菌(はくせんきん)は地上では重力で足下に落ちますが、
宇宙ステーションでは微小重力のために、宙に浮いているので
吸い込んでしまう可能性があります。このように浮いたカビを吸い込むことで、
地上では起こりにくかった病気が発生してしまうかもしれません。
そのため宇宙ステーションにどのくらいのカビが浮いているのかを
調べようしているのです。
また、研究者の間では「微小重力下ではカビの病原性が増すのではないか」
「細胞壁が厚くなるのではないか」といったことが予想されていますが、
実際はどうなのかがいよいよわかります。病原性の変化だけでなく、
抗真菌薬に対するカビの耐性がどう変わったかというような研究も
あわせて行うことになっています。
このように、人間が宇宙で暮らすための実験が着々と進められているのですね。
私たちの種子の研究もその多くの研究のひとつになるなんて、
とても壮大ですね。(伊地知)